『20世紀少年 第1章 終わりの始まり』レビュー:明るい科学の未来も恐怖の大王も来てくれなかったディストピアな21世紀

映画・ドラマレビュー
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作品概要

1970年代、あの頃のぼくたちにとって、21世紀は夢と希望にあふれた未来のはずだった。しかし、やってきた未来は夢も希望もない毎日。思い描いた明るい科学の時代は到来しなかったのに、最悪の未来だけが実現しようとしている。

秘密基地、5段変速のウインカー付き自転車、そしてノストラダムスの大予言。これらのキーワードにビビッときたら、きっとあなたも20世紀少年ですね。

映画『20世紀少年 第1章 終わりの始まり』は、浦沢直樹の人気漫画を原作としたシリーズ1作目。現代と過去の記憶を行き来しながら、世界征服と人類滅亡を企むカ○ト教団と戦う幼なじみたちの活躍を描いています。

主なキャスト・スタッフ

  • 唐沢寿明(ケンヂ)
  • 豊川悦司(オッチョ)
  • 常盤貴子(ユキジ)
  • 香川照之(ヨシツネ)
  • 石塚英彦(マルオ)
  • 宇梶剛士(モンちゃん)
  • 佐々木蔵之介(フクベエ)
  • 生瀬勝久(ドンキー)
  • 小日向文世(ヤマネ)
  • 佐野史郎(ヤン坊・マー坊)
  • 光石研(ヤマさん)
  • 石橋蓮司(万丈目)
  • 黒木瞳(キリコ)

 

  • 原作:浦沢直樹『20世紀少年』
  • 監督:堤幸彦
  • 配給:東宝
  • 上映時間:142分
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あらすじ

売れないロックミュージシャンだったケンヂは、失踪した姉キリコが残した赤ん坊のカンナを背負いながらコンビニを営む毎日。

ある日、ケンヂは幼なじみのドンキーが亡くなったことを知るが、その影には「友だち」と名乗る覆面の男が率いるカ○ト教団の影があった。しかも教団のマークは、子どもの頃にケンヂたちが使っていた仲間だけのマークと同じものだった。

「友だち」の目的は、ケンヂが子どもの頃に書いた「よげんの書」を実現させ、人類を滅亡させること。それを阻止するため、ケンヂは昔の仲間たちと立ち上がる。

感想・レビュー

近頃のAmazon Prime Videoは、ぼくがまた観たいな〜と思っていた作品をタイムリーに配信してくれるのがウレシイ。先日レビューした『ALWAYS  三丁目の夕日』シリーズもそんな作品だったけど、ぼくがまだ産まれていないか覚えていない頃の物語だったので、リアルなノスタルジーを感じるというほどではなかった。

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でも『20世紀少年 第1章 終わりの始まり』は、ぼくが過ごした子ども時代と近く、かなりリアルに当時の雰囲気を思い出すことができた。仲間と秘密基地を作ったり、5段変速にウインカー付きの自転車で走り回っていたり、まさにケンヂたちと同じような幼少期を過ごしてきた。

小学生の頃、図画工作の時間で「未来のこの街を描きなさい」というお題が出された。みんな思い思いに未来の街並みを描いたが、どれも自動車が空を飛んでいたり、丸や三角の奇妙な形をした建物が林立している光景ばかりだった。今にして思えば、どうして当時の子どもたちは同じような21世紀を想像していたんだろう?

科学が発達した夢のような世界を空想する一方で、ぼくたちは人類滅亡にもワクワクした。五島勉の『ノストラダムスの大予言』という本がベストセラーになり、友だちの部屋にこの本のシリーズがズラッと全巻揃っていたのを思い出す。

「1999年7の月、空から恐怖の大王がやってきて人類は滅亡する」とかなんとか、まあそんなことが書いてあったみたいだ。明るい科学の時代と人類滅亡。相反する未来予想図だけど、どちらも子どもにとってはワクワクする大イベントのように感じていたのかもしれない。

それでも、ほんとうに人類は滅亡するんだろうかと、大人になって迎えた1999年に少しは期待していた20世紀少年たちは多かったんじゃないだろうか?

結局は明るい科学の時代も恐怖の大王も来てくれなかったけど、まさか21世紀の日本がこんなディストピアになるとは、ノストラダムスも予想できなかっただろう。

原っぱの秘密基地で、ケンヂたちはマンガに描かれた人類滅亡のイラストを見ている。そこに描かれているのは、凶悪宇宙人の襲撃、巨大隕石の衝突、第3次世界大戦の勃発。ドンキーは「そんなの、あるわけないよ!」と言ったけど、宇宙人はともかく、隕石の衝突と第3次世界大戦はありそうだ。

近頃インターネット界隈で話題なのは、2025年にまつわる予言の数々。太平洋に隕石が落ちて日本が大津波に覆われるとか、第3次世界大戦か注射の影響で世界の人口が激減するとか、いつの時代も人類滅亡には不思議と人の心を惹きつける魔力がある。

中学生になったケンヂは、放送室をジャックしてロックをかけた。曲はTレックスの「20センチュリー・ボーイ」。この曲は1972年に来日した彼らが東京のスタジオでレコーディングしたというから、日本の映画に使われてマーク・ボランも本望だろう。

ぼくが中学の頃も、昼休みの校内放送はクラシックばかり流れていた。友だちが放送委員になってロックをかけたら、すぐに教師が飛んできて音量を下げろとクレームをつけてきたそうだ。当時は管理教育の全盛期。教師は傍若無人の限りだったから、この後に校内暴力や家庭内暴力が流行ったのは当然だった。

ぼくはロックで世の中が変わるとは思ってなかったけれど、ロックミュージシャンにはなりたかった。そんなところはケンヂに感情移入しやすい共通点かもしれない。

あの頃の子どもたちは正義のヒーローに憧れ悪の組織と戦うことを夢見ていたし、自分には何かできる可能性があると思っていた。結局は大したこともできず、つまらない日常に埋もれる日々。大人になった20世紀少年たちにとって、この映画はあの頃の夢を叶えてくれるファンタジーだ。

細かいところに突っ込めばキリがないほど御都合主義なストーリーだけど、仮面ライダーもウルトラマンもそうだった。野暮なことを言いたくなるのは、子どものように素直な目で観る感性が穢れてしまっていたようだ。このシリーズは、ただひたすら童心に帰って観るのが正しい楽しみ方なんだろう。