ぼくが小学5年生のころ、突如としてテレビに衝撃的なバンドが登場しました。リーゼントに白いツナギを着た4人組のロックバンドが奏でる軽快なロックンロールは、いたいけなぼくの心をロックオン! それ以来、50年もダウンタウンブギウギバンドの音楽を聴き続けています。
今回レビューするのは、彼らの初ライブアルバム『脱・どん底音楽会』。「スモーキンブギ」で一躍お茶の間に躍り出た彼らの勢いのある演奏が堪能できます。
曲目紹介
会場のザワツキが聞こえてくると「おタバコをお吸いの方は、所定の喫煙場所にてスモーキンブギをしてください」「興奮しましてもアーティストの衣装・体にはお手を触れぬようお願いします」とアナウンス。場内からは笑いが起きます。
ラジオの深夜放送『オールナイトニッポン』で人気を博した糸井五郎氏が登場しての前説。今どきのライブにはあり得ない、時代を感じさせる演出です。
1曲目は「ダメな女の四畳半」。彼らのデビュー曲「知らず知らずのうちに」のB面収録曲で、後のヒット路線を感じさせるファニーな歌詞のロックンロール。
続いてはメンバー紹介。ドラムの相原誠から始まって、リードギターの和田静男、ベースギターの新井武士、サイドギター&ボーカルの宇崎竜童、最後はサポートメンバーの千野修一と続き、そのまま2曲目の「脱・どん底傷だらけのブルース」に突入。
3曲目は渋いバラード曲の「恋のかけら」。大ヒットした「スモーキンブギ」のB面収録曲で、「涙のシークレットラブ」と並ぶ不倫の名曲。小学生の分際で、毎日「恋のかけら」に聴き惚れていたことを思い出します。
MCで観客にコール&レスポンスを要求してから、3曲目は彼らの出世作となった「スモーキンブギ」。当日集まったファンたちもノリノリで楽しんでいる様子が伝わってきます。
唐突に楽屋での様子と思われるメンバーの会話が挿入された後に第2部の開始。5曲目「アイ・ニード・ユア・ラヴ・トゥナイト」、6曲目「ハウンド・ドッグ」とエルビス・プレスリーのナンバーが続きます。
「こういう曲やるからキャロルと間違われるんだよね」と宇崎竜童の自虐ネタ。メンバーは着替えのために引っ込み、その間を千野修一が軽快なブギウギピアノで埋めています。今にして思えば贅沢な演出ですね。
ここから衣装がトレードマークとなった白いツナギになったようです。そして7曲目はデビュー曲「知らず知らずのうちに」。スタジオ録音版は初期メンバーの蜂谷吉泰さんが絶品のギターを奏でていた名曲ですが、このライブでは和田静男さんもシブいギターを聴かせてくれます。
アマチュア時代に米軍基地で演奏していたというMCからの8曲目は「ベース・キャンプ・ブルース」。ふだんは陽気な米兵たちが、次に行ったときはベトナム戦争に出征していたという深い歌詞です。
9曲目はスト〇ップ劇場の踊り子さんを歌った「ジプシー・マリー」。ボーカルはベースの新井武士さんですが、「赤坂一ッ木どん底周辺」など、こういう曲を歌わせるとホントにいい味出しますね。また、この曲に続く「セントルイスブルース」では学生時代ブラスバンド部だったという宇崎竜童さんのトランペットが聴けます。
ライブもいよいよ終盤。10曲目「カッコマン・ブギ」から11曲目「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」とヒット曲の連続で幕を閉じます。
あらためて感心するDTBWB初期の名演奏
このアルバム『脱・どん底音楽会』は小学生時代にアナログレコードで買い、当時は毎日のようにヘビロテで聴いていました。その後はレコードプレイヤーのない生活が続いたことや、実家の整理でレコードもすべて処分してしまったため、この音源は記憶のかなたに残るばかりでした。
それがAmazonでCDとして発売されているのを発見! しかも960円という廉価に速攻でポチりました。
あらためて聴き直してみると、彼らの演奏力がとても高いことに驚きます。当時まだメンバー全員が20代だったのに、生演奏でもまったくブレないサウンドは、彼らがライブバンドとして地道にキャリアを積んできた賜物だろうと思います。
そして、ぼくがエレキギターを買ってブルースロックにのめりこむようになったのは、このアルバムでの和田静男さんに影響されたと言っても過言じゃありません。
『脱・どん底音楽会』は、DTBWBがノリにのっていた初期の名演を納めた貴重な音源。それだけにノーカットの音源を聴いてみたいと思わずにいられません。