行き詰まった世の中をリセットしたいと願う人々の想念が、破滅の予言を引き寄せる?
近頃YouTubeでは、ある予言についての話題でもちきりです。それは2025年7月5日、日本を壊滅的な災害が襲うというもの。
きっかけとなったのは、漫画家たつき諒氏の『私が見た未来 完全版』というコミックス。たつき氏は1999年に発売した『私が見た未来』の表紙に「大災害は2011年3月」と書いたことで東日本大震災を予言したと話題になり、『私が見た未来』の古本は10万円で取引されるほどプレミアがつきました。
その『私が見た未来』にコンテンツを追加して発売されたのが、2021年に発売された『私が見た未来 完全版』。この中に2025年7月、フィリピン沖の海底がボコンと盛り上がり、東日本大震災の3倍の巨大津波が日本・台湾・フィリピンなどに壊滅的な被害をもたらすと書かれています。
もしこれが現実になるとしたらその日まで1年を切ったことになり、多くのYouTuberたちは今が稼ぎどきとばかりに予言にまつわるコンテンツを量産しています。
予言と言えば真っ先に思いつくのが、1999年7の月に人類が滅亡するという『ノストラダムスの大予言』。昭和の子どもたちのあいだで人気となりベストセラーとなりましたが、これは出版社に急かされて書いただけだと、あとになってから著者の五島勉氏がインタビューで答えています。
次に話題となったのは2012年にまつわる予言。マヤ族の暦が2012年までしか作られなかったことから、この年が人類にとって最後になるというもの。これも『2012』という映画になってヒットしました。
しかし、昭和と平成を賑わせた2つの予言は見事にスルー。ところが令和になって、またまた予言ブームが再燃しています。
YouTubeで100万人を超えるフォロアーを持つインドの天才予言者アビギャ・アナンド君は、日本では2024年4月まで地震のリスクが多いと予言。奇しくも2024年の元日に能登半島で大きな震災が起こってしまいました。
物理学者の保江邦夫氏は、2025年「8月」に隕石がフィリピン沖に落ちると言います。氏によると、NASAは地球に衝突の可能性がある隕石について捕捉しており、それがいつどこに衝突するか軌道計算まで終わっているが、人々をパニックに陥れるため公表を控えているそうです。
それだけなら眉唾な話ですが、2022年にNASAが「プラネタリーディフェンス実験」を行ったことが話の信憑性を高めています。これは探査機を小惑星に衝突させて軌道の変更に成功したというもの。このタイミングでNASAがそんな実験を行ったのは、やはり近いうちに隕石が衝突するからではないかと憶測を呼んでいます。
そして近年になって注目されているのが「日月神示(ひつきしんじ)」という予言の書。これは第2次世界大戦中の昭和19年、画家の岡本天明氏が天啓によるメッセージを自動書紀で書き留めたもの。これによると新コロが流行った子の年(2020年)を堺にした前後10年に大規模な災害(大峠)を迎えるといいます。
しかし、どうして人類に破滅的な驚異が訪れるという予言が繰り返しあらわれるのでしょう? その理由は、今の世の中に覆いかぶさる閉塞感かもしれません。
今この地球上には数え切れないほど多くの問題が満ちています。大きなところでは自然破壊、その原因となる過度な経済活動、それによる貧富の拡大など、もうこの世界の生きづらさは個人の努力ではどうにもならないところまで来ています。
となると人々の深層心理には、この世界をリセットするような災害を心のどこかで待ち望む気持ちが起きても不思議ではありません。
ユングが唱えた人々の「集合的無意識」が破滅を招く
人の心には自覚できる領域の他に、自分でも気づいていない「無意識」があります。過去の辛い記憶やモラルに反する思想などは無意識に閉じ込められていますが、それがふだんの意識にも影響を与えていると言われます。
最初に無意識の存在を主張したのはオーストリアの心理学者・ジークムント・フロイトでした。彼のもとには多くの心理学者たちが集まりましたが、その中のカール・グスタフ・ユングは、人の心には個人的な無意識のほかに、全人類が共有する無意識領域があると主張しました。
場所や人種や時代が違っても人間が同じような行動を取るのは、人類の心の奥底にある「集合的無意識」の働きだとする説です。
もしユングの言うとおり、すべての人類が共有する集合的無意識があるとすれば、ネガティブな想念が現実を引き寄せる可能性もあります。
強く願ったことは叶うという「引き寄せの法則」を聞いたことがあると思います。個人的には願っただけで現実が都合よく変わるとは思いませんが、もし数え切れないほど多くの人々が同じような想念を共有したら、もしかすると現実を引き寄せることがあり得るかもしれません。
量子物理学では、電子や光子のようなミクロの存在は波動であり物質でもあるとしています。人が思ったことや考えたことは脳内を流れる電気信号なので、それは波動として電波のように放出されます。放出された想念は集合的無意識に蓄えられ、ある程度まで貯まると現実を動かす大きなエネルギーになることも考えられます。
ユングの集合的無意識と同じような考え方として、仏教に「阿頼耶識(あらやしき)」という説があります。また同じく仏教から生まれた概念に、過去・現在・未来のすべての情報が記録されている「アカシック・レコード」があります。さらに量子物理学では「アカシック・レコード」と同じ概念を「ゼロポイント・フィールド」と呼ばれています。
これらの概念に共通するのは、人の想念はエネルギーであり、絶えず生まれては消えるというもの。そして、それらの想念はこの世界にあまねく存在する領域に記録され、そこから事象が発生するということです。
だとすれば、多くの人々が今の世の中に不満や憤りを感じていると、それが集合的無意識、阿頼耶識、アカシック・レコード、ゼロポイント・フィールド、呼び方はなんでもいいですが、それらを通じて一つの巨大な想念となり、実際に破滅的な現象を呼び寄せてしまうかもしれません。とくに2025年7月5日と具体的な日付まで特定されていれば、その日がXデーとなる可能性は高くなります。
もちろん、これは個人的な仮説に過ぎません。しかし、日本列島には今後かなり高い確率で地震や津波が発生するとされていますから、いつ予言のような大災害が起こるか知れません。いざとなったとき、数日ていどは生き延びられる備えはしておきましょう。