映画『死国』感想・レビュー:ジワる日本の正統派ホラーの名作!

サスペンス・ホラー
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作品概要

映画『死国』は坂東眞砂子の小説を原作としたホラー映画。閉鎖的な四国の片田舎を舞台に、夢を抱えながら若くして亡くなった少女の純粋さと残酷さが幼なじみの男女を苦しませます。

昨今のホラー映画にありがちな騒々しい演出は一切なく、人間模様を細やかに描くことで怖さを感じさせる、これぞ日本のホラーといった名作です。

  • 原作:坂東眞砂子
  • 監督:長崎俊一
  • 配給:東宝
  • 公開:1999年1月23日
  • 上映時間:100分

主なキャスト

  • 明神比奈子:夏川結衣
  • 秋沢文也:筒井道隆
  • 日浦莎代里:栗山千明

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あらすじ

四国八十八か所の霊場を巡るお遍路には、故人の年齢と同じ数だけ反対に回ると死者が蘇る「逆打ち」という儀式があった。村の老婆・照子(根岸季衣)は16歳で亡くなった一人娘の莎代里を蘇らせるため、今まさに16回目の「逆打ち」を終えようとしている。

グラフィックデザイナーの比奈子(夏川結衣)は子どもの頃に離れた郷里の矢狗村を訪れ、幼なじみの莎代里(栗山千明)が死んでいることを知る。比奈子はもう一人の幼なじみ文也(筒井道隆)と愛し合うようになるが、二人の前に死んだはずの莎代里があらわれる。

ジャパニーズホラーNo.1の名作!(個人の感想です)

ジャパニーズホラーの金字塔と言えば『リング』シリーズですが、個人的にはこの『死国』のほうが好みです。

そもそも日本のホラーというより「怪談」は、じわじわとメンタルに来る怖さが持ち味でした。昔の古い怪談映画でも、恨みつらみの怨念がよく表現されているものが多く観られます。

それがいつの間にか、ドバーン! ガタ〜ン! と派手な効果音や、ワッ! と驚かせるコケオドシ的な演出が多くなり、日本のホラーからジワる怖さが薄れていった気がします。

そんな中で日本古来の(と言うと大げさですが)メンタルにひたひたと迫るような静かな怖さを堪能させてくれるのが『四国』です。

夏川結衣と栗山千明の起用が大正解

今作のヒロイン比奈子を演じるのは当時30歳ころの夏川結衣さん。後にテレビドラマ『あなたの隣に誰かいる』や『結婚できない男』などでブレイクしましたが、今作では比奈子のしっとりと大人っぽい役柄がぴったりマッチしています。

そしてもう一人のヒロインは、今作が映画デビューとなった栗山千明さん。当時15歳ということで実年齢も役柄と同じくらいですが、なんといってもインパクトのあるビジュアルが印象的でした。

おかっぱロングの黒髪に切れ長の目はリアルお菊人形のようで、夢をたくさん抱えながらも若くして亡くなった少女の無念さを好演しています。

この二人にモテモテなのが筒井道隆が演じる文也。そのへんにいる平凡な兄ちゃんですが、莎代里の過剰な愛情に戸惑いながらも、それほど愛されていたのが嬉しかったというセリフ、男なら一度は言ってみたいものです。

最後に取った文也の行動は莎代里への愛情なのか、それとも比奈子を守るためだったのか?

悪霊となった莎代里を派手な除霊で撃退するような野暮な演出はせずに、あくまでも男女三人のあいだにある複雑な想いで締めくくったところが見事です。

当時は『リング2』との同時上映でしたが、むしろ『四国』のほうが良かったという声も多かったようです。

この『死国』を観てから原作をはじめ、これも映画化された『狗神』や『蛇鏡』なども読んでみました。いずれも原作者の故郷である四国を舞台に、じめっとした湿度の高いホラーを楽しめるので、読書が苦にならない方には小説もおすすめです。