『いちご白書をもう一度』って曲が好きで、今でも時々聴くことがあります。1975年に「バンバン」というグループが歌ってヒットした曲で、作詞・作曲は荒井由実(当時。現:松任谷由実)。
中学2年生のとき文化祭で合唱をすることになったんだけど、当時は赤い鳥の『翼をください』が合唱の定番曲。
あんまり定番すぎて何組も『翼をください』を歌うもんだから、合唱コンクールだか『翼をください』コンクールだかわからないような感じでした。
うちのクラスも何を歌うか決めなきゃならないんだけど、さすがに『翼をください』だけはやめとこうっていう暗黙の了解が教室に充満してたのは覚えてます。でも、この曲にしようっていう提案は誰からも出ない。
当時の中学生でも「合唱なんてダッセーわ!」な気持ちがあったから全然やる気がない。もちろん曲を決めようとする意欲もない。
そんなモチベーションど底辺な生徒を見かねた担任が候補として何曲か聴かせてくれて、その中にあった『いちご白書をもう一度』でいいや! って感じで決まりました。
あいかわらず『翼をください』でカブリまくってる他のクラスに比べて、『いちご白書をもう一度』を歌ったのはうちのクラスだけ。それだけでポイントゲットだったと思うけど、合唱コンクールの結果が何位だったかなんて覚えてない。反抗期真っ盛りの中2だから、めっちゃフテくされながら歌ったのは覚えてます。
で、それから数十年経って『いちご白書をもう一度』を聴き直したとき、歌詞に矛盾があるのに気がつきました。
就職が決まって髪を切ってきたとき、もう若くないさと君に言い訳したね。
作詞・作曲:荒井由実 1975年
ふつうは就職活動に備えて髪を切るんじゃないだろうか? まさか、こいつは長髪のまま面接を受けていたのか? 中坊のころは気づかなかったけど、大人になってから聴くと妙に気になる。
と思ってたら、やっぱりそう思った人は当時からいたようで、Wikipediaで『いちご白書をもう一度』のページを見るとこうありました。
歌詞にある「就職が決まって髪を切ってきた時」というフレーズに対し、音楽プロデューサーの前田は「就職が決まって髪を切るはずないじゃない」とツッコミしている。(中略)また、ばんば自身は「一瞬妙に思ったが、超優秀だから長髪でも内定した、ということにしておこう」と語っている。
なわけあるか~い!
この曲は、左翼の男子学生が卒業を控えてあっさり社会に迎合した様子を、彼女から軽蔑の目で見られたって内容なんだけど、ここにユーミンの皮肉がこもってるような気がします。
そもそも、男のほうは「学生集会へも時々出かけた」程度だったのに対して、女はもうちょっとガチで左翼思想にかぶれているように思う。
男は大学を卒業したら働かないといけないとわかってるから、安保闘争にもあまり真剣になれない。でも女のほうは卒業したらOL(オフィスレディーの略)でもしてから嫁に行けばいいから気楽に左翼思想にかぶれることができる。そんな男女間の思想に対する温度差がスゴク表れていると思います。
中2の文化祭でこの曲を歌ったときは「学生集会」がなにかも知りませんでした。学生が集まってミーティングでもしてんのかな? 生徒会みたいなもん? くらいしか思わなかった。そもそも「いちご白書」が映画のタイトルだとも知らなかった。
そういう左翼思想にかぶれた連中がたくさんいた時代だったというのは、戦後史としては知ってる。けれど、そこにシンパシーを感じたことはない。
っていうか、学生運動してた奴らは遅い反抗期だっただけじゃねーかと思ってる。
お勉強ばっかりしてきたボクちゃんやオジョーちゃんたちが、中学や高校時代に発散できなかった鬱憤を学生運動というイベントで発散していただけ。
中には赤軍派とかいうマジ〇チな奴らもいたけど、ほとんどの学生たちは当時の流行りに乗っていただけのファッション左翼だったと思う。
とか言うと「世代の違うオマエになにがわかる!」ってマジギレされそうだけど、ほとんどの学生はガチで左翼思想に染まっていたわけじゃないだろう。
2018年に亡くなった保守系評論家の西部邁も学生運動に熱心だったというけど、西部は当時「日米新安全保障条約」の中身は一度も読んだことがなかったと後年メディアで告白していた。
西部のように、ほとんどの学生たちも同じだったんじゃないだろうか? 中身も知らず、周囲に流されるままお祭り気分で「安保反対」ってワッショイワッショイしてただけ。
それが東京大学をはじめ、一流大学の学生たちばかりなんだから、なにが一流なんだかわかりゃしない。
こういう学生たちがマスコミに入って左翼思想丸出しの偏向報道をしたり、国会議員になったり、財務省とかの官僚になったんだろうと思うと、今の日本がこうなった一因がわかる。
『いちご白書をもう一度』の男は「もう若くないさ」と、ファッション左翼を自覚しているだけまだマシ。でも、「いつまでもバカやってらんねーから、ボチボチ就活でもすっか」と身軽に転向していく学生たちを、ユーミンは皮肉な目で見ていたんじゃないだろうか? なんて、この曲を聴くとそう思う。