【信用創造】銀行はキーボードを叩くだけでおカネを創りだせる?

おいちゃんの経済学復習コース
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おいちゃんが『東大生が日本を100人の島に例えたら面白いほど経済がわかった!』(ムギタロー著 サンクチュアリ出版)で学ぶ経済学復習コーナー。

前回の「国債の発行 政府の借金で世の中におカネが出回る」では、政府がいわゆる「国の借金」と呼ばれる国債を発行することで、世の中におカネが出回り国民が豊かになるというお話でした。つまり、政府の負債は国民の資産ということです。

これでもう「国民一人あたり〇〇〇万円の借金がー」とほざくコメンテーターにだまされずに済みますね。

さて、今回のCHAPTER 2-6では、銀行による「信用創造」についてのお勉強です。政府だけじゃなく、民間銀行もおカネを創りだすことができるという刺激的な内容となっています。

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銀行は預金を又貸ししているわけではない!

銀行は集めた預金を、おカネが必要な人や会社に貸している。ふつうはそう思いますよね。

じつはこれ、違うらしいんです。

じゃあ、銀行はどうやっておカネを貸しているかというと、借りる人の預金通帳に「〇〇〇万円」と融資額を記帳するだけだそうです。

この時点で常識的にコツコツと生きてきた人ほど「そんなバカな!」と思ってしまいそうです。しかし、これが貸し出しの実態だと言います。

信用創造で、おカネは無限に生み出せるのか?

もちろん、いくら銀行でも無制限におカネを貸し出すことはできません。おカネを貸すときに制約となるのは、①借り手の返済能力、②準備預金の2つがあります。

まず「信用創造」というくらいですから、おカネを貸す相手が信用できなければなりません。

例えは悪いですが、35歳の公務員男性Aさんが家を買うから2000万円貸してくれと言った場合と、50歳のパートタイム労働者Bさんが遊んで暮らしたいから2000万円貸してくれと言った場合、どちらを信用できるでしょうか? もちろんAさんですよね。

公務員なら収入も安定しているし、定年になれば、まとまった退職金も受け取れる。それまでの年収を考えても貸し倒れになるリスクは低いだろうと銀行は判断します。

Bさんに対しては「おととい来やがれバカヤロー」とは言いませんが、やんわり「お帰りください」ということになるでしょう。

もうひとつの制約となる「準備預金」とは、民間銀行が日本銀行に預けておくおカネです。例えば、A銀行がBさんから100万円預かったら、そのうち1万円を日銀に預けます。※準備預金の比率は貸出金額や銀行によって異なります。

銀行は日銀に預けている準備預金より多い金額の貸し出しを行うことはできないとされているので、準備預金も信用創造を行うときの制約となります。

ただし、多くの民間銀行は充分な準備預金をもっているので貸し出しの制約になることは少なく、むしろ、融資できる金額は「自己資本比率規制」で制限されています。

自己資本とは、銀行が健全な経営を行うために必要な銀行自身の財産のこと。貸し倒れによる不良債権の処理などは、この自己資本で処理します。自己資本率は国際業務を行う銀行が8%以上、国内業務だけの銀行は4%を維持するようにされています。

信用創造に元手は必要ない

信用創造は本節にあるとおり、誰かがおカネを借りたときに新しくおカネが生まれるものです。これが錬金術っぽいために、なかなか理解されにくい部分だとも言われます。

昔は銀行マンが顧客の通帳に融資額を書き込んでいたので「万年筆マネー」と言われていたそうですが、現代ではパソコンから打ち込むだけなので「キーボードマネー」とでも言いましょうか。

ただ、今でも銀行は顧客から預かったおカネを又貸ししていると説明されていることも多いようです。

α銀行がAさんから1,000,000円を預かり、準備預金分の10,000円を抜いた990,000円をBさんに貸した。

Bさんは990,000円をβ銀行に預け、β銀行は990,000万円から準備預金として9,900円を抜いた980,100円をCさんに貸した。

BさんとCさんがおカネを借りたことで、Aさんが預けた1,000,000円から990,000円+980,100円=1,970,100円のおカネが新しく世の中に生まれました。

という説明です。

しかし、この説明だと銀行は顧客から預かったおカネを元手に又貸ししていることになるので、信用創造の説明としては間違いになります。

教科書や教育産業のWebサイトにも、信用創造の又貸し説が書かれていることも多く、2022年の大学入試共通テストでは信用創造に関する問題で混乱が起きたそうです。

経済学のむずかしいところは、すべての理論が学者のあいだで統一されていなことがあるところですね。わかりやすいところでは、経済活動を市場の働きに任せる新自由主義vs政府の適切な介入が必要だとするケインズ経済学の対立なんてのもあります。

人によって言うことが180度違う摩訶不思議な経済学。そのため、経済の入門書を読んでも、そこに書かれている主張がまるで違って悩まされることがあります。

ということで、今回はここまで。したっけ!